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「君が・・・・・・・アトム君だね?」
映画監督としても有名な手塚眞氏監修、
そしてあの浦沢直樹氏が描く漫画『PLUTO(プルートゥ)』をこないだ読みました。







手塚治虫原作「鉄腕アトム」のエピソードの一つ
『地上最大のロボット』(第13巻に収録とのこと)

を『YAWARA!』『MONSTER』でお馴染み、浦沢直樹氏が
リメイクした
この作品。




(ちなみに手塚眞氏は、手塚治虫氏の実の息子さんです。)









俺は手塚治虫氏の漫画は「ブラックジャック」は全巻一応昔に読んだ事はあったんですが、
「鉄腕アトム」「ジャングル大帝レオ」などの他の有名な作品は
何故か手を出したことが無かったのです。しかし「地上最大のロボット」どころか
「アトム」自体読んだ事が無かったおかげで、逆に新鮮に読めました。









手塚氏の凄い所は、「ゲーテ」の『ファウスト』や、『仏陀(ブッダ)
など難しい話をあえて題材に漫画を書いたりするところですよね。










「ブッダ」は漫画ではない本の方と、漫画では話が内容的にはちょっと違うんですが
ニュアンスはほぼ完璧に汲んであるのです。
内容を咀嚼して、理解していないと書けない題材なので「凄い!」と思いました。





頭良い人ほど、難しい事を『分かり易い言葉や表現』で
俺みたいなバカにでも分かりやすく伝えられるのだなあ、と。
(養老孟子さんとかもそうですしね。)





(しかし『ファウスト』は未完で終了してます。病気とかじゃなくて『まとめきれなかった』のが
理由だとの話です(真相は謎)、ラストのあたりは最近のジャンプの「ハンター×ハンター
状態で、ほぼ下絵の状態で単行本に収録されてます。)























この漫画を漫画でリメイクした、『PLUTO』の主人公はゲジヒトという男で
アトム君は脇役という設定になっています。(これも上手い配役だと思う)

第一巻では、イントロダクションと言うか、人物(ロボット?)の紹介エピソードがメインで
アトム君も意外な形でちょこっとしか、まだ出てきてません。











また手塚作品でお馴染みの、「違う漫画のキャラクターを使う」(ブラックジャックに
『ブッダ』のキャラクターを(設定は全然違う別人として)出したりとか)を、
この作品でもやっています。

(誰が出てるかは実際に読んで確かめてみて下さい。ただあのシルエットと内容の流れから
確実にあの人かなと。ここら辺は浦沢さんも、手塚氏へのオマージュで出したんでしょうか。)


この先も楽しみなので、原作はまだ読まないつもりです。






「PLUTO」は手塚治虫テイストもしっかり入っているので、
そこも「さすが浦沢さん!」と思わせる部分であります。
特に『戦争の悲しみ』テーマに盛り込んでいて(まあ、原作がそうなんだろうけど、それを違和感無く
盛り込むのは簡単な作業ではないと思う。)
それは手塚氏が書く漫画では、結構多く取り扱われているテーマでもありましたしね。
(違うのもあったけど)







アドルフに告ぐ』や、短編「紙の砦」などは
なんというか戦争経験者だからこそのメッセージというか、気持ち悪く残る何か、
哀しみに近い何かを訴えかけてきます。


特に「紙の砦」は実体験というか、主人公の顔から確実に手塚氏本人がモチーフですし、
(デカい鼻とメガネとか)

俺が一番覚えてるシーンは
















空爆かなんかで、街が火の海になって、主人公が思いを寄せる人(記憶曖昧、彼女だったかも)
が火で顔に大やけどを負って、一緒に逃げる途中に「アメリカめー!」という
感情になるんだけど、





今度は、アメリカの墜落した飛行機の残骸から、米兵の死体が出て来るんだけど、
それを村中の人たちが棒とかで、目玉が飛び出るくらい数人で「お前らのせいだ!」
と、抵抗も出来ない屍を仕返しとしてボコボコにしてるのを見て

複雑な心境にかられる、という場面です。







こういう微妙な感情の変化を捉えた表現は、なかなか出来るものではないですよね。














よく「人類愛の人」みたいなニュアンスで、
死後やたら美化された手塚治虫像があったので、最初手塚作品をあまり読む気が
起こらなかったんですが、



たまたま手塚氏のインタビュー集みたいのを
図書館で高校時代に読んで彼は





俺は、どっちかっていったらペシミスト(悲観論者)の暗い奴なんだ。
変な持ち上げ方はやめてくれ
。」



と、「世界平和を訴える人」みたいなイメージを毛嫌いしているのを見て
俄然興味が湧いて読むようになりました。















手塚氏の場合、
なんというか


あぁー、戦争いきたくねぇー。」

「俺運動神経ねーし、殺されるっつーの。行っても戦力にゼッテーなんねーって。」



といった内気な奴の、身近に実際にやってくる戦争への本音というか、
「世界平和を願いましょう。」といった分かり易いけど曖昧なアプローチよりも
手塚氏らしい「戦争行くより、家でマンガ書いてる方が楽しい。」といった
非常にタテマエ無しの感じのリアルな(身近な)アプローチの感じがするんで好きなんですよね。



で、実際の戦争体験で「その思いは間違ってなかった」といった感じで、
戦争ってのは、こんな辛いし、エグいのよ~。ヤメた方がいいんだよ。」と
戦争体験を話してくれるおじちゃんな感じで書いていたんではないかな、と。単純に。



実際に読んで手塚作品はヒューマニズムに溢れていて、実際に平和主義者だと思うのですが
照れ隠しでそれを否定してるというのがなんか嘘っぽくなくて良いです。














浦沢さんはそんな「マンガの神様」相手にタイマンでやりあってますが、
今のところ遅れをとってないどころか、単純に、「面白い」マンガになりそうです。
(まあ、まだ内容全然進んでないけどね)










ただ唯一残念なことは、
俺がこの傑作マンガを「ブックオフ」で350円で買い叩いてしまった事です。
浦沢さん、申し訳ない。(今度は正規の値段で・・・・)


追記:
どうも、森本貴幸ですドカーン

カズさん・・・。しょうがねえ。

大久保、マジョルカへ。とうとう・・・。

「君が・・・・・・・アトム君だね?」_b0008133_22375326.jpg

by gattuso.no.8 | 2004-11-06 22:54 |